『シークレット・ウォーズ』 ©MARVEL ©FURYU Corporation
こんちは!
サンドです。
マーベル作品でも類を見ないほどのスケールで物語を展開してきたジョナサン・ヒックマン。
今回はそんな彼の集大成である『シークレット・ウォーズ』をレビューしていきます。
「どの時期の作品なの?」
「オススメのポイントは?」
などの、今作に関する悩みを解決できる記事となっております。
皆さんが購入される際の手助けとなれば幸いです。
ネタバレは一切ないので、ご安心を(ネタバレある箇所は隠してあります)!
なお、リーフやオンゴーイングなどのアメコミの形式に関する説明は本記事では省いています。
もしわからない単語などがあったら、こちらの記事も参考にしてみてください。
収録タイトルやライター・アーティスト情報
出版社:ヴィレッジブックス
ライター:ジョナサン・ヒックマン
アーティスト:イサド・リビック(メイン)、ポール・ルノー
収録タイトル
- 『Secret Wars』#1(2015年7月)
- 『Secret Wars』#2(2015年7月)
- 『Secret Wars』#3(2015年8月)
- 『Secret Wars』#4(2015年9月)
- 『Secret Wars』#5(2015年10月)
- 『Secret Wars』#6(2015年12月)
- 『Secret Wars』#7(2015年1月)
- 『Secret Wars』#8(2015年2月)
- 『Secret Wars』#9(2015年3月)
- 『Free Comic Book Day』(Secret Wars)(2015年7月)
あらすじ
内容を全く知らない状態で読みたい方は飛ばしてください。
どんなストーリーなのか少しは確認したい方は、こちらを開いてください。
公式サイトからの引用なので、結末に関するネタバレはありません。
直前の『アベンジャーズ:タイム・ランズ・アウト』までのネタバレがあります。
多元宇宙同士の衝突「インカージョン」により、並行世界はひとつ、またひとつと消えていく。
ヴィレッジブックス作品ページ
地球のヒーローたちの努力もむなしく、最後に残った世界同士の衝突が始まった。
そして、その結果生まれたのは、巨大なパッチワークのごとき一つの世界…バトルワールド。
生き残ったヒーローたちは、世界を取り戻すことができるのか?
ジョナサン・ヒックマンによるアベンジャーズ・シリーズの集大成となる1冊が満を持して登場!
作品概要や出版背景の解説
本作は2015年に展開されたクロスオーバー作品で、全9話で完結するリミテッドシリーズです。
2013年ごろからマーベルが立ち上げた”MARVEL NOW!/マーベル・ナウ”というキャンペーン。
その中でジョナサン・ヒックマンが2年半に亘って手掛けてきた『Avengers』Vol.5、『New Avengers』Vol.3、『Infinity』の最終章でもあります。
現在のマーベルユニバースへの転換点とも言える作品で、かなり重要度の高いストーリーになっています。
最初に断っておきますが、これまでの作品を読まずに本作から手を付けるのは止めましょう。
全く話についていけません。
読むべき作品は後程紹介しますが、シリーズ1巻目から読めばアメコミ初心者の方でも存分に楽しめます!
何を言ってもこれまでのストーリーのネタバレになるので、本作の内容についてはあまり触れないでおきます笑。
1980年代にも、『Marvel Super Heroes Secret Wars』という作品が展開されていましたが、それと直接的に関係ある内容ではないです。
一部設定をオマージュしている箇所はありますが。
『マーベルスーパーヒーローズ:シークレット・ウォーズ』として全2巻で邦訳されているので、気になる方はチェックしてみてもいいかもしれません。
ミスター・ファンタスティック/リード・リチャーズやドクター・ドゥーム/ビクター・フォン・ドゥームをはじめ、多数のヒーローやヴィランが登場します。
スパイダーマン/マイルス・モレラスといった平行世界のキャラクターも活躍します。
個人的には、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)における次の『アベンジャーズ エンドゲーム』(2019年)的な作品は、本作がベースになるのではないかと予想しています。
作品の評価・感想
壮大だった…。
出し惜しみせず、「これでもか」と言わんばかりにストーリーが進んでいきます。
何が起こっているのかわからず、先を知りたくてどんどんページをめくってしまいます。
直前の『アベンジャーズ:タイム・ランズ・アウト』で張られた伏線も回収されます。
よくこんなストーリーが思いつくな…。
ただ、物語のスケールが大きいにも関わらず、エンディングが駆け足で説明不足なのが残念です。
ここをもうちょっと丁寧に描いてくれればホントに傑作だったのですが…。
イサド・リビックのアートは、インクでカチッと決めた線ではなく、鉛筆で描いたような温かみある線が特徴的でした。
影の付け方も鉛筆で塗った感があります。
アメコミとしては珍しい描き方ですが、個人的にはけっこう好みです。
『マーベルズ』でお馴染みのアレックス・ロスのハイクオリティアートが表紙と背表紙の両面にあしらわれています。
巻末にはリーフの表紙を飾ったアートも掲載されているので、必見です!
ジョナサン・ヒックマンのアベンジャーズシリーズ総括(ネタバレあり)
ここからは、ジョナサン・ヒックマンが手掛けた『アベンジャーズ:アベンジャーズ・ワールド』~本作までの全体的な感想を述べていきます。
思いのたけをひたすら綴っているので、長くなります笑。
ネタバレ全開なので、本作を読み終えてから開くことをオススメします。
一言で率直な感想を述べると
「凄くもったいない」
です。
あと一歩でマーベルの中でも最高傑作、神シリーズになるのになぁ…。
中身のストーリーはホントに面白いのですが、いかんせん説明不足なのが玉に瑕ですね。
具体的に挙げてみます。
『アベンジャーズ:ラスト・ホワイト・イベント』でスーパーフローが破壊されましたが、その原因は分からずじまいです。
百万年機能したシステムを破壊したあの青いウネウネは何なのか?
インカージョンと関係があるのか?
また、バリデイターの父親がなぜ自殺したのかも不明です。
システムが起動したと囁かれただけで、なぜ自殺する必要があるのか?
『アベンジャーズ:タイム・ランズ・アウト』で明らかになった、ラブム・アラル/大いなる破壊者とアイボリー・キングス/象牙の王達の目的。
ただ、ドクター・ドゥームのやっていたことの意味があるのかが不明でした。
モレキュールマンを同時に爆発させても、1人1人殺していっても結果は変わらないように思います。
仮にマルチバースが10あったとして、9破壊して1残したとしても、結局ビヨンダーズによってモレキュールマンを起爆させられたら終わりですし。
最終的にはビヨンダーズを全滅させる方向に目的を変えていましたが、最初の活動はなんだったのでしょうか。
そもそも、モレキュールマンを殺したらその宇宙が消滅するのかもわかりにくかったですし。
最初にモレキュールマンが自身を殺した時や、ドゥームが初めてスワンに会った時も、宇宙が消滅してそうな雰囲気はありませんでした。
タイムラグがあるのかもしれませんが…。
僕は「モレキュールマンがビヨンダーズに起爆されずに死んだ場合、その宇宙は消滅しないのか?」と思ってしまいました。
このあたり設定の描写がふわっとしているので、説明不足に感じてしまいます。
また、ブラックパンサーが最後に何をしたのかも不明でした。
どのインフィニティジェムを使ったのかすらわからなかったです。
解説書にはリアリティジェムと記されていましたが、僕はタイムジェムを使ったのかと思いました。
プライムユニバースはブラックパンサーが復元したのか、ミスター・ファンタスティックによって復元されたのか謎ですね。
ここまで不満点しか書いていませんでしたが、もちろんほめるべき点もたくさんあります。
このシリーズは最初からゴールを見据えて脚本が書かれていると思います。
そのためストーリーに一貫性があり、伏線もうまいこと張られています。
インカージョンやラブム・アラルは序盤から言及されていましたが、ストーリーの終盤までキーとなる要素でした。
実際、ラブム・アラルの正体には衝撃を受けました。
キャプテン・アメリカとアイアンマンを生と死として対立させる構図も素晴らしかったですね。
『アベンジャーズ:タイム・ランズ・アウト』の最後にその意味が明らかになる脚本には脱帽です。
謎を残したままストーリーを進めていく構成も、ホントにうまいと思いました。
だんだんとその謎が解けていくので、どんどん先に進みたくなるんですよね笑。
これもゴールを最初から定めているからこそできる構成です。
物語の規模にも驚かされました。
マルチバースの崩壊って、これ以上の規模の物語はないように思います。
『インフィニティ・ガントレット』のスケールにも驚きましたが、本シリーズはそれを優に越えてきます。
インカージョンやモレキュールマンの設定もよく思い付くなと。
これらのスケールの物語を、既存のキャラクターで展開していくのも凄いです。
ドクター・ドゥームとモレキュールマンは60年代、ビヨンダーは80年代から登場しているわけですし。
これだけ素晴らしいことをやっている分、もったいないなという思いが強くなってしまいますね。
ホントもったいない…!
前後で読みたい関連する邦訳アメコミ
『アベンジャーズ:アベンジャーズ・ワールド』、『ニューアベンジャーズ:エブリシング・ダイ』 ©MARVEL ©FURYU Corporation
本作を読むにあたって、必読なのは下記の作品です。
- 『アベンジャーズ:アベンジャーズ・ワールド』
- 『ニューアベンジャーズ:エブリシング・ダイ』
- 『アベンジャーズ:ラスト・ホワイト・イベント』
- 『インフィニティ』(Ⅰ~Ⅲの3巻)
- 『アベンジャーズ:タイム・ランズ・アウト』(Ⅰ~Ⅲの3巻)
これらの作品は全てジョナサン・ヒックマンがライターを務めていて、それぞれが密接に関わっています。
全て読んだからこそ味わえる面白さが本作にはあるのです!
『アベンジャーズ:アベンジャーズ・ワールド』から既に、「今までのアメコミとは違うぞ」感が出ているので、1冊だけでも読んでみることをお勧めします。
新しいキャンペーンの1話からなので、初心者の方でも問題なく楽しめます。
詳しい解説や感想はこちらの記事へ。
まとめ:『シークレット・ウォーズ』の感想・あらすじ・解説
GOOD
先が見えない壮大なストーリー
直前までの伏線回収
BAD
駆け足で説明不足なエンディング
現在のマーベル作品に続く、極めて重要な1冊です。
不満点も述べましたが、中身のストーリーはホントに面白いので、読む価値は大いにあります。
ぜひ、シリーズを通して読んでその衝撃を味わってほしいです。
それでは今回はこのあたりで。
長々とお付き合いいただき、ありがとうございました!
その他のコミック情報は邦訳アメコミカタログへ。
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